2024.08.09

エキキタまちづくり会議

JR広島駅北口に広がる通称「エキキタ」のエリアマネジメントに取り組む「エキキタまちづくり会議」。事務局を務める復建調査設計株式会社の宇山穂さん、同団体会員の株式会社AttractOneの水本浩太さんと広島市東区役所市民部 地域起こし推進課の松浦宏至さん、神部僚平さんに、住民、企業、行政が一体となって進める地域共生のまちづくりについてお話を伺いました。

  
 目次
 ・「エキキタまちづくり会議」誕生の経緯
 ・目指すのは「自律的」マネジメント活動
 
・地域の文化を支え、地域共生の街を目指す

「エキキタまちづくり会議」誕生の経緯

復建調査設計株式会社の宇山穂さん。会議の運営や行政との折衝、イベントの企画などを主導している

「エキキタまちづくり会議」は、「エキキタ」と呼ばれるJR広島駅北口一帯のまちづくりに取り組むことを目的に2015年に設立されたエリアマネジメント団体です。地元の町内会や商工会、事業者、行政(東区役所)など、27の団体によって構成されています。

事務局を務めるのは、復建調査設計株式会社 社会デザイン創発センター 副センター長の宇山穂さん。出向先の東京から広島に帰ったタイミングで、エキキタまちづくり会議の事務局を任されました。

最初は全てが手探りだったという宇山さんですが、2017年ごろから駅前広場の全面リニューアルやJR広島駅の南北自由通路の全面開通、広島テレビ社屋の移転と、再開発や区画整理の成果が次々と目に見え始め、「ここを広島の玄関口にふさわしいまちにしたい」「そのためにはこの機会を逃してはならない」と、まちづくりの機運の高まりを感じたといいます。

そのタイミングでみんなと取り組んだのがエキキタエリアの将来像を描いた「エキキタビジョン」の作成でした。

「(仮称)エキキタまちづくりガイドライン エキキタまちづくりビジョン」より

「このエリアは、戦前からある古い住宅地や、高層マンションや商業ビルが立ち並ぶ新しい街区など、時代背景や地域性も異なるさまざまな街区が入り混じった地域です。また住居以外にも医療機関やホテル、神社仏閣などあらゆる施設があり、そこには住む人、勤める人、泊まる人など様々な人がいる。そのため、このエリアのみんなが共有できるビジョンが必要だと考え、『エキキタまちづくりビジョン』の作成を進めました」(宇山さん)

さらに、さまざまな立場からまちづくりを考える際の基準となる5つの「取組み目標」と「取組みプロジェクト」も策定。エキキタのまちづくり活動はこの5つのどれか1つにアプローチすることを条件に企画・実施されることになりました。

目指すのは「自律的」マネジメント活動

5つの「取組み目標」のうち、事務局が最初に取り組んだのが「安全安心快適」なまちづくりを目指す一斉清掃活動でした。JR広島駅は来訪者が初めて目にする「広島の玄関口」。エキキタを広島の顔としてふさわしい場所にしたいという想いから、月に1回の清掃活動が始まりました。

地元住民や事業所の従業員など毎回100人を超える人々がこの清掃活動に参加している/画像提供:エキキタまちづくり会議

2018年からは行政が管理する13の公園や緑道の指定管理を行政から尾長地区連合町内会と連携して受託。「せっかく自分たちで綺麗にするのだから、ここを使える場所にしよう」と、「エキキタカラフルマルシェ」の開催など公共空間の利活用にも自主的に取り組むようになりました。

「エキキタカラフルマルシェ」は会場設営や当日の運営に、延べ140~150人の会員が出動。適材適所で自主的に手伝う/画像提供:エキキタまちづくり会議

いざ取り組むと、公的空間には多くの規制があり「してはいけないことだらけだった」と宇山さんは振り返りますが、「公的空間が変われば、街も変わる」というコンセプト通り、「エキキタカラフルマルシェ」の認知度アップとともに「エキキタ」という名称も浸透し、地区外からもたくさんの人が集まるようになりました。

こうした地道な活動が実り、2019年には広島市がエリマネ活動計画認定制度(※1)を策定。エキキタまちづくり会議はその第1号として特例の規制緩和が認められることになりました。

「エキキターレ」は広島テレビ社屋横の幅20メートル、長さ100メートルの「公共空間」。2019年よりイベント会場として使われている/画像提供:エキキタまちづくり会議

公的空間の利活用については、他にも広島テレビ社屋横のイベントスペース「エキキターレ」でも積極的に進めており、現在は年間で200日ほどイベントやキッチンカーの出店に利用されるまでになったそう。

「大きな開発や区画整理が進むエキキタには企業や行政が所有する公的空間がたくさん生まれています。それらがきちんと維持管理されなければ、土地の資産価値も下がり、街の魅力も低下してしまいます。そうならないために、公的空間を使える空間にして、そこで得た収益を街の維持管理に回す仕組みをつくることが当面の目標です」(宇山さん)

※1 エリマネ活動計画認定制度とは、エリアマネジメント活動において公益性、必要性が認められれば、公共施設等の有効活用に支障となる規制を特例的に緩和される制度

地域の文化を支え、地域共生の街を目指す

公的空間の維持管理や利活用とともに、エキキタまちづくり会議が存在感を発揮しているのが、地域のまつりやイベントをサポートする活動です。

「エキキタの19の町内会からなる尾長地区連合町内会が小学校のグラウンドで開催していた盆踊りがあるのですが、会員の高齢化や町内会離れがあって運営に苦労していました。一方、我々も『エキキタ』の認知度アップに繋がるコンテンツを検討していた。そこで盆踊りと我々が企画した夏まつりイベントを合わせて、エキキターレで『エキキタおながフェスタ』として開催することにしました」(水本さん)

結果的に、参加する町内会の数は2倍以上になり、来場者も地元だけでなく広域から集まってくるようになったそう。
「地域のまつりをエリマネ団体が支えるという、共存共栄の関係をつくれたのは、社会課題解決に向けて一つの道筋になったと思います」(宇山さん)

エキキタおながフェスタの企画・運営イベントのプロとして企画・運営や広告の分野を担う株式会社Attract Oneの水本さん(写真左)

またJR広島駅北口と周辺の菓子店を巡り、地元の小中高生が考案した菓子などを楽しむスタンプラリー「エキキタ・スイーツラリー」も、エキキタまちづくり会議がサポートすることによって、地域を代表するコンテンツに成長した事例の一つ。同団体が主催者に加わることで協賛企業が増え景品も豪華になり、イベントへの参加者も倍増したそうです。

宇山さんが勤務する復建調査設計株式会社はエキキタエリアで60年近く、まちづくりに関する事業を行っている

確実に人口が減少していく中で、その土地に根付く文化をいかに継承し、地域活動を支えていくのか。それは全国どのエリアも抱える社会課題の一つだという宇山さん。「エキキタおながフェスタ」や「エキキタカラフルマルシェ」の事例はエリマネ団体が地域課題の解決に取り組む一つの形だと思うとした上で、次のように語ってくれました。

「今ではよく知られることですが、社会課題解決のためには、解決することが収益に繋がる仕組みが必須です。その仕組みをエキキタでつくりたいし、大規模な開発が進む今のエキキタでならその仕組みがつくれるんじゃないかという想いもある。明確な答えがあるわけではありませんが、地域住民や企業の皆さんとこれからも根気よく街の課題に向きあい、広島の顔にふさわしい、品格のある街を目指して活動を続けたいですね」


Profile

エキキタまちづくり会議
古くから歴史・文化、往来、コミュニティの“交流”によって育まれてきたエキキタに、“新たな交流”が融合して、広島の玄関口というステージでエキキタの魅力ある資源を活かして、持続的に賑わいが生まれるまちづくりを目指しています。エキキタは来訪者が最初に目にする「広島」であり、このエリアには事業所だけでなく多くの人が居住しています。来訪者、居住者にとって、快適・安全・安心は、全ての人のまちづくりの基本としてとらえ、きれいなまちで、安全で安心して生活できるまちづくりに取り組みます。

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