2024.09.18

並木コンソーシアム


並木コンソーシアム
創立/2020年
活動エリア/広島市中心市街地(うらぶくろ・並木通り・袋町公園・アリスガーデン周辺地区)
活動実績/
<社会実験イベント>
・トランクマーケット
・並木ジャルダン
・nono
・大イノコ祭り  等

<活性化プロジェクト>
・U2GO(URABUKURO TO GO PROJECT)
・並木通りブランドアッププロジェクト  等

<その他>
・マチカグ(イベント用テントやストリートファニチャー等の
レンタル・販売をするプラットフォーム) 等

「並木コンソーシアム」は、広島の中心地部のうらぶくろ、並木通り、袋町界隈、アリスガーデン周辺を活動エリアとし、エリア内の【公園】【道路】【公開空地】などパブリックスペースの新たな活用方法をデザインする集団です。

団体誕生の背景や活動内容、同団体が描くまちの未来ビジョンについて、並木コンソーシアムの代表を務める奥原誠次郎さんと、事務局の福本成美さん(株式会社リレイ/株式会社カナデル取締役)にお話をうかがいました。

並木コンソーシアム誕生の背景

代表を務める奥原誠次郎さん。「うらぶくろ」の活性化プロジェクトや、袋町公園を舞台にした蚤の市「トランクマーケット」を開催するなど多くの経験と実績を持つ。

広島平和公園や中央公園、紙屋町・八丁堀からも近く、おしゃれなショップやファッションビルが軒を連ねる並木通りやアリスガーデン周辺地区。しかし近年は、歩道や街路樹の老朽化が進み、決して居心地が良く歩きやすい場所とはいえない状況にありました。

また周辺では、商店街や町内会などがまちづくり活動を行なっていましたが、連携した活動には至っておらず、そのことに危機感を持った、広島市中央部商店街振興組合連合会・並木通り商店街振興組合・うらぶくろ商店街振興組合・ふくろまち界隈まちづくり協議会の6団体を中心に、地域住民や地権者など50を超えるメンバーが、地域全体での価値の底上げと統一感のあるまちづくりを目指し「並木コンソーシアム」を立ち上げました。

代表としてこの大所帯を取りまとめるのは奥原誠次郎さん。「居心地が良く、歩きたくなる」ウォーカブルなまちづくりを目指し、国土交通省の『官民連携まちなか再生推進事業』の採択を受け、勉強会や分科会など重ねながら、未来ビジョンの作成や社会実験を主導しています。

並木通りのポテンシャルを証明した「並木ジャルダン」

2022年に開催した並木ジャルダンの様子。

「並木ジャルダン」は、並木コンソーシアムが2022年と2024年に並木通りで実施した社会実験で、並木通りの数区間を1車線に減少して車道にうまれた空間に、広島にまつわる植物を使って憩える森や庭を出現させ「歩きたくなる、遊びたくなる、廻りたくなる」ストリートを演出。交通調査だけで済ませる社会実験も多い中、「それでは目指すべき街の姿は見せられない」と、有識者や建築家、デザイナー、プランナー等も巻き込み、空間の仕立てや見せ方にこだわりました。

「たった2、3日間のことですけど、ウォーカブルなまちづくりというものを可視化するために、ちゃんとデザインされた居心地のいい空間を出現させて、それを体感してもらうということを意識したトライアルでした」(奥原さん)

開催中は植栽のワークショップを開催したほか、約30店の飲食ブースが出店。ストリートファニチャーも設置した並木通りは多くの人で溢れ、近年見たことがないほどの賑わいを見せました。
「この仕組みが常設されればここにウォーカブルな空間をつくることができる」と、並木通りという場のポテンシャルも十分に感じたといいます。

社会実験の成果と見えた課題

「トランクマーケット」「並木ジャルダン」でリーシングや各店舗等のコーディネートやAD,CD,PRを担当。進行中の「並木ブランドアッププロジェクト」も一員となって推進する福本成美さん。

成果は体感だけでなく、数字でも実証されています。実施前と実施中に沿道にビデオカメラを設置し、自動車、歩行者、自転車の通行量や荷捌きの実態を調査したところ、「並木ジャルダン」の実施中は、並木通りを南北に通行する自動車の数はすべての区間で減少。荷捌きのための停車時間も短くなり、ほぼ全体的に安心して歩ける環境になったことで、全ての区間で歩行者の数は増加するなど、居心地の良い空間や魅力あるモノ・コトがあると、そこに人は集まりコミュニティが生まれることをあらためて実感したといいます。

一方で、この社会実験を通して感じた課題もあったというのは、同団体の主要メンバーとして奥原さんを支える福本成美さんです。

「並木ジャルダンに来てくださった人から『楽しかった』『またやってほしい』という声をたくさんいただいて、そう思っていただけるのはもちろん嬉しいのですが、私たちとしては、この社会実験イベントをきっかけに、並木コンソーシアムが目指すウォーカブルなまちづくりに興味を持ってもらいたいという思いもあったので、なかなかそこまで至らないことに少し歯痒さを感じる部分もありました」(福本さん)

仲間づくりについて「仕事のように時間や賃金による契約ではない、“微かな糸”で繋がる難しさを感じている」という奥原さんと福本さん。

「さらにいえば、僕らはまちづくりのプレイヤーを増やしたいんですよね。そのためには、まちづくりというものがもっとみんなの暮らしの中にちゃんと入り込んでいくことが必要で、そうなるためにどうするのがいいのかはまだ試行錯誤中なんですけど、もっと仮説と実験を重ねなくちゃいけないんだろうなと思っています」(奥原さん)

ただ、最近は少し明るい兆しも見えるといいます。
「『並木ジャルダン』のボランティアに参加してくれる若者の中に、ソーシャルな活動に価値を感じる人達もすごく増えていて、それは私達の世代にはあまりなかったこと。今後はそういう人たちに向けてもっと門戸を広げていきたい」(福本さん)

「昔は僕らみたいなことをしていたら奇人変人みたいに見られていたけど(笑)、今の若い人たちはソーシャルに関わることが普通の感覚になりつつあるし、デフォルトでそういう手段を持っている人も多い。たとえ手段を持っていなくても、立つ位置を少し変えるだけで、これまで見えていなかったことや、自分にできることが見えたりするので、そういうバイアスを僕たちが取っ払えたらいいですよね」(奥原さん)

ウェルビーイングなまちづくりを目指して

広島都心といわれる広島市中心部の開発の動きが活発化する中、並木コンソーシアムの活動エリアにおいてもいよいよ、道路の改修工事等、ハードの整備が進められようとしています。

「道路が綺麗に整備されてウォーカブルな街並みになることで、経済的に潤ったり、人の通行量が増えたり、買い物客の滞在時間が長くなったりして、周辺に住んでいる人や会社のみならず、観光客たちも“なんかいい感じ”と思える状況がつくれたらいいなと思いますよね」と、整備の進捗に期待を寄せる奥原さん。ただその“なんかいい感じ”はハードの整備によってだけつくられるものではないといいます。

「居心地の良さや幸福感は誰かの手によって美しくなったまちを訪れるだけで得られるものではなくて、まちづくりを自分ごととして楽しむことだったり、みんなでそういうシーンをつくり出すことが暮らしの中に当たり前にある。そうしてみんなに“居場所”がうまれて、人と繋がりあえることで、本当の幸せを感じられるんだと思う」(奥原さん)

並木コンソーシアムのサイトには、同団体が目指すビジョンがこう記されています。

「自分たちのまちは自分たちで創る。未来へつなぐ。」

取材中、奥原さんと福本さんが何度も口にした「自分ごととして楽しむ」という言葉も然り、それこそが並木コンソーシアムが目指すウォーカブルなまちのつくり方であり、目指すまちができた先にある、ウェルビーイングな人とまちの関係。まちと真摯に向き合うお二人に、まちづくりに関するたくさんのヒントをいただきました。


Profile

並木コンソーシアム
地権者、住民、地元企業、商店街、行政が一体となって、パブリックスペース ( 公共空間 ) を有効活用し、人々が居心地よく歩きたくなる・暮らし働きやすい次世代の地域循環型のまちづくりを目指しています。

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