2024.08.09

大手町・紙屋町未来会議

広島市の中心部、観光と市民生活が最も交差する広島市中区の紙屋町2丁目、大手町1丁目・2丁目において「一体感のあるまちづくり」を目指して、2021年に設立された「大手町・紙屋町未来会議」。事務局を務めるのは、株式会社握手カフェ代表取締役・おりづるタワー 事務局長補佐の常廣尚志さん。「町内会活動のようなつもりで」とあくまで自然体で取り組むエリアマネジメント活動について、団体設立の経緯や現在の進捗についてお話を伺いました。

  
 目次
 ・目指すのは観光客と住民が心地よく共生する街
 ・みんなでワクワクを共有するまちづくり
 ・小さな積み重ねがいつか街の宝になる

目指すのは観光客と住民が心地よく共生する街

写真は大手町1丁目にある広島県民文化センター前。家電量販店やパソコンショップが立ち並び、広島の電気街ともいわれるスポット

今回ご紹介する「大手町・紙屋町未来会議」の対象エリアである紙屋町2丁目、大手町1丁目・2丁目は、平和記念公園の対岸、元安川湖畔に南北に細長く横たわる街区です。大手町1丁目には、原爆ドームがあり、おりづるタワーや家電量販店、飲食店などの商業施設も多くあることから、観光客も多く行き交う場所です。

一方で、戦後の再開発をきっかけにオフィスの移転や人口の減少の影響により、街区では空きテナントや空き地のコインパーキング化という課題も抱えています。

おりづるタワー 事務局長補佐と​​握手カフェの代表取締役という肩書きをもち、観光業にも深く関わる常廣さんは、この街をもっと元気で、楽しい場所にするカギは、観光にこそあると感じているといいます。

常廣尚志さんは元コンビニエンスストアのスーパーバイザー。観光業に携わりたいとおりづるタワーを運営する広島マツダに転職、現職に就いた

「街が元気になれば観光も盛り上がるし、観光が盛り上がれば街は潤う。特に世界的な観光資源を抱えるこの場所であればなおのこと、まちづくりと観光は一緒に考えるべき」と、観光に対する熱い想いを口にする常廣さん。平和公園や原爆ドームには、世界中から観光客が訪れますが、このエリアがそうした観光客の受け皿にはまだなれていないといいます。

「例えば大手町1丁目に爆心地の島病院(現・島内科医院)があるのですが、そこにある石碑を見ようと立ち止まった観光客のすぐ後ろを車がビュンビュン通り過ぎる。せっかく興味を持って立ち止まったのに、危ないからと足早に去ってしまう。これはほんの一例ですが、人視点でまちづくりができていないというか、一番大事なことがおざなりになっている気がします」

常廣さんの想いは、安全安心に過ごせる場所は、安全安心に暮らせる場所でもあるということ。
「キャリーバックを引いている観光客にとって歩きやすい歩道は、ベビーカーやシルバーカーを押している人にとっても歩きやすいんです。観光の話をすると『平和で商売をするのか』という意見も聞かれるのですが、そういうことではなくて、観光という視点でまちづくりを考えることは、街の住みやすさや心地よさにつながっていくよね、という話なんです」

みんなでワクワクを共有するまちづくり

「『街を良くしたい』と願う人々をつなぐハブのような存在になりたい」と常廣さん

「大手町・紙屋町未来会議」が設立されたのは2021年のこと。発端は、県の呼び掛けで2018年から3回ほど行われた意見交換会だったといいます。その後も約20人が研究会を重ね、街の未来像の素案を作成するなどして、団体の設立にこぎつけました。

参加者からは集まった声(一部)
・歩くことを中心に、街区と道路空間を再編してはどうか
・裏路地のワクワク感をデザインできないか
・「体験の街区」としてこのエリアをデザインできないか
・ひろしまゲートパークや県民文化センターの賑わいを街区にも共有できないか

現在は、意見交換会や勉強会で集まったこれらの意見をまとめて、被爆100年目にあたる2045年にこの街区がどうなっていたいのか、そのコンセプトやビジョンをつくっている真っ最中だといいます。

「街は放っておいても変化し続けますが、変わっていく環境に依存するのか、それとも変化の中で意志を持つのか。私は後者がいいんです。一人では難しくても、 みんなでワクワクするビジョンを描き進めていけば、少しずつでもいい方向に街を変えていけるんじゃないかと思う」
団体としてまちづくり活動を推進することの意義について、そう教えてくれました。

小さな積み重ねがいつか街の宝になる

2023年9月に開催した第1回「オオカミフェス」にて/画像提供:大手町・紙屋町未来会議

団体としてまだ具体的な活動は少ないとしながら、2023年から広島県民文化センター周辺の商業施設などを回遊してもらうことを目的にした「オオカミフェス」というイベントを開催しています。なぜ「オオカミ」なのか、その理由を問うと、

「大手町と紙屋町の頭文字、大と紙の2文字を組み合わせて『オオカミ』と名付けました。これは1回目のイベントを手伝ってくださった広島青年会議所の皆さんが、『オオカミナイト』というネーミングでコラボイベントを企画してくれて、その名前が良かったのでそのまま使わせてもらったんですけどね(笑)」

イベント開催にあたっては、広島県民文化センター周辺にある15〜20の飲食店も、オオカミに関連するオリジナルメニューを販売してイベントを盛り上げてくれたそう。また広島青年会議所の協力により、紙屋町筋の道路の一部を歩行者天国にすることもでき、大きな賑わいを創出できたと振り返ります。

「この地域って、実はこれまでお祭りがなかったんです。でもこういうイベントを続けることで、もしかしたら10年後にこの祭りが風物詩になっているかもしれない。そんな未来になっていたら楽しいじゃないですか」

日々、本来の業務で忙しく過ごされている常廣さんですが、大手町・紙屋町未来会議の事務局の活動については「お父さんが家に帰ってきて『ちょっと町内会の会合に行ってくるわ』っていうスタンス(笑)」と、あくまでも自然体。そんなフラットな姿勢が共感を呼び、協力しようとしてくれる人が自然に集まってくるのかもしれません。

「一人では無理でも、集まって話し合うことで膨らんだり、結実したりすることってありますよね。これからも『もうちょっと、なんとかなるんじゃない?』っていう、その『もうちょっと』のところを、みんなであがきながら考えていきたいですね」


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大手町・紙屋町未来会議
観光と市民生活が最も交差する、広島市中心市街の紙屋町1丁目、大手町1丁目・2丁目において、まちづくりや店舗・企業・諸団体各々の活動を支持しながら、この地域の公共空間の機能性・利便性の向上や利活用の促進、エリアビジョンの策定に取り組んでいます。

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