2024.08.09

広島駅周辺地区まちづくり協議会

1999年の広島駅南口Aブロック市街地再開発(エールエールA館)を皮切りに進められてきた広島駅周辺の再開発。その総仕上げとなる新駅ビルの開業もいよいよ目前に迫り、広島駅周辺が今、大きく変わろうとしています。この広島駅周辺エリアのマネジメントに取り組む「広島駅周辺地区まちづくり協議会」について、事務局を担当し、エールエールA館の創業当初から運営管理を担ってきた大宮勉さんと、運営を支援する吉田実さん(中国地域創造研究センター)に、具体的な取り組みや目指すビジョンについてお話を聞きました。

  
 目次
 ・陸の玄関にふさわしいまちづくりを目指して
 ・コロナ禍の経験を、まちのブランド力向上に活かす
 ・公共空間の活用で自走可能な仕組みをつくりたい

 ・「この場所でしか生まれない価値」を創る

陸の玄関にふさわしいまちづくりを目指して

「25年前の駅前って本当に何もなかったんですよ。ビッグカメラさんができるまでは商業ビルって駅ビル(ASSE)さんとエールエール A館だけで、駅の南口と北口も今みたいに地上では繋がってさえいなかったんです」

かつての広島駅周辺の様子をそう振り返るのは、広島駅南口周辺のまちづくりに長年携わってきた大宮勉さん(広島駅南口開発株式会社)です。

エールエールA館が創業した1999年頃の広島駅周辺の様子を振り返る大宮勉さん(写真左)

エールエール A館があるAブロックの再開発以降、停滞していた広島駅周辺に大きな転機が訪れたのは、2009年にマツダスタジアムが開業したときでした。

「もちろんそれまでもいろんな取り組みはあったのですが、流れが一気に変わったのはマツダスタジアムができたとき。駅周辺をもっと盛り上がるぞ!という機運がグッと高まりましたね」(大宮さん)

広島駅周辺のエリアマネジメントの議論が本格スタートしたのは2014年。当初、事務局を任されたのは中国地域創造研究センターの吉田実さんです。

吉田実さん。同協議会設立にあたって周辺の企業・事業者を1軒ずつ訪問し、エリアマネジメント団体の趣旨や必要性を伝えたという

「参加する企業・事業者が決まってからは『エリアマネジメントとは何か?』『そのために何をすべきか?』といった認知を共有するための勉強会から始めました。その後、活動の方向性や具体的な取り組みを決める議論には、ワークショップやグループディスカッション形式を取り入れ、参加者が主体的に関わることができるよう工夫しました」(吉田さん)

多業種の企業や事業者の意向の調整は時間を要しましたが、2018年に広島駅周辺地区まちづくり協議会が設立。顔を合わせる機会が多くあった分、地区内の事業者同士の連帯感を醸成できたそう。

「協議会のキャッチフレーズもみんなで案を出し合って、最終的に全員の投票で決めることができましたし、準備期間中に始めた 『おもてなし清掃活動』も、月1回にペースアップして今も継続しています」

毎月1回活動している「おもてなし一斉清掃」。毎回40~50人が参加する


コロナ禍の経験を、まちのブランド力向上に活かす

同協議会では設立時に「目指す5年後のまちの姿」として「目的を持って訪れる来街者が増え、地区のブランド力が高まっている」というビジョンを掲げました。

「駅は多くの人にとって“通過点”なのでなかなか滞在してもらえないという課題がありました。そこでまずはこのエリアに賑わいを生み、回遊性を高めるためのコンテンツ作りに取り組みました」(吉田さん)

最初に実現したのが、広島駅南口地下広場のクリスマス装飾と周辺施設のライトアップをつないで一つイベントとして盛り上げた「EKIMACHIイルミ」。今では毎年恒例行事として認知されるコンテンツに成長しました。
2023年の「EKIMACHIイルミ」の様子

2020年に新型コロナ感染症が拡大してからは、何より地域のためになることを優先するべきとの判断から、長引くコロナ禍で困窮していたホテルや飲食店の支援に着手。

通常は物販が禁止されている広島駅南口の地下通路をテイクアウト販売の場として提供する「EKIMACHIテイクアウト」やエリア内の飲食店の回遊を促すグルメスタンプラリーを企画。スタンプラリーには、協議会会員以外の飲食店を含む68店舗が参加。スタンプラリー応募総数は3815件、金額にして約1900万円相当の消費活動を創出する成果をあげました。

最近では広島駅付近の渋滞対策の検討や、帰宅困難者対策を視野に入れた防災まちづくりの推進、駅周辺で増えているタバコのポイ捨てに関する取り組みなど、社会課題の解決にも積極的に取り組むようになったといいます。

「私たちの活動によって駅周辺が、みんなにとって過ごしやすく、『いい場所だよね』と思ってもらえるようになれば、結果として私たちが当初から目指している『まちのブランド力』の向上に繋がるのだと思います」(吉田さん)

公共空間の活用で自走可能な仕組みをつくりたい

同協議会設立から5年という節目を経て、今、一番の課題は財源をどう確保していくかということ。現在、同協議会の活動資金は主に会員企業からの年会費や地下広場での広告事業の収益で賄っていますが、このままでは継続的な活動は難しいといいます。

「考えているのは、川辺のような公共空間の利活用を賑わいづくりだけでなく、活動財源の確保に繋げること」と吉田さん。

大宮さんも「広島駅前には猿猴(えんこう)川がありますが、駅前に川があって、その川辺で憩うこともできるって、他の地域の主要駅周辺にはない魅力。上手に活用したい」と期待を寄せます。

広島駅前を流れる猿猴川と大正時代の姿に復縁された猿猴橋(写真右奥)

川辺という公共空間をみんなで「耕す」

2021年からは同協議会が河川の占用主体の指定を受けて、猿猴川の川辺にある二つ広場を使って「RIVER 『みんなの』MARKET」という主催イベントも開催。広島市内で活躍する店舗による販売ブースを設けたり、キッチンカーも多数出店するなど、大きな賑わいを創出しています。

「RIVER「みんなの」MARKET」

「回を重ねるごとに、このイベントを楽しみに来てくれる人も増えました。今後は我々の主催イベントだけでなく、いろんな方にいろんな使い方をしてもらえる仕組みを作って、川辺の空間活用を収益事業化していけたらと考えています」

大宮さんも「川辺に加え、新駅ビルが完成すれば周辺施設を繋ぐペディストリアンデッキなど、さらに公共空間は増えます。そうした空間の有効活用を財源確保に繋げて、このエリアにどんどん投資できるようになりたい」と、駅周辺の“これから”に期待を滲ませます。

「この場所でしか生まれない価値」を目指す

再開発が進み、先進的なエリアとしてのイメージが強い駅周辺ですが、一方でエリア内にある猿猴橋は広島城築城とほぼ同時期に架橋された広島最古の橋とされる歴史的価値の高い橋です。このような歴史的背景もエリアマネジメントの資源として大切にしたいと大宮さんはいいます。

2016年に猿猴橋が復元されたのを機に翌年の2017年から始まった「えんこうさん」

「あまり知られていませんが、猿猴橋は西国街道においても重要な道筋だったという歴史を持っています。毎年『えんこうさん』という祭りも開催されていて、当協議会としてももっと主体的に関わって、いずれはえびす講やとうかさんのような広島を代表する大きな祭りにならんかなと思っているんですよね」

そのためにも地域住民の力は欠かせないという大宮さん。年末には町内会が実施する夜廻り活動に参加するなど、少しずつ交流の機会を増やしているそう。

吉田さんも様々な立場の人が活動に関わる意義についてこう話します。
「駅は鉄道を利用する人だけじゃなく、買い物に来る人や観光の人もいるし、ビジネスの人もいる。もちろん住んでいらっしゃる方もいる。広島駅南口に隣接する広島JPビルディング2階には広島大学のサテライトスペース『広島大学きてみんさいラボ』ができて、学生さんも増えました。そうしたいろんな人が過ごしやすい場所であることがここにしかない価値であり、我々が目指すべきビジョンなのだと思います」

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広島駅周辺地区まちづくり協議会
広島駅周辺の企業・団体でつくるエリアマネジメント団体です。
広島の玄関口である広島駅周辺が「ワクワクドキドキできるまち」「変化し続けるまち」となるように、環境づくりや魅力づくりに取り組んでいます。

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